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成年後見制度について

日本弁護士連合会が発行する自由と正義の2017年12月号で,成年後見制度に関する特集が組まれていました。

成年後見関係事件(後見開始・保佐開始・補助開始・任意後見監督人選任)の申立件数は,2016年には35000件近く行われていることが記載されていました。

特集の中で,後見関係事件では,法律上鑑定実施が原則とされているにもかかわらず,鑑定実施件数が減少しており,原則と例外が逆転している傾向にあると記載されていました。

これをみて,成年後見制度適用を認めた家庭裁判所の審判を,名古屋高裁が「鑑定手続きを取られておらず手続き違法がある」ことを理由に取り消した決定を出したという,今年の11月の新聞報道を思い出しました。

法律上鑑定が必要とされているにもかかわらず,鑑定手続きを行わない理由としては,費用や鑑定人確保などの様々な問題が絡んでいると思われますが,成年被後見人などとされた人にとっては,自分の社会生活に多大な影響が生じることから,名古屋高裁の決定のような事態が生じないよう,適切に対応していくことが必要なのだろうと感じました。

なお,交通事故案件でも,高次脳機能障害などの重度後遺障害が残存した場合で,被害者の方の能力に問題があると思われる事案については,成年後見や保佐などの申立てを行うこともあります。

成年後見申立ての場合,専門家後見人として弁護士が就任することが多いため,「家族の中に他人が入ってくる感じがして,成年後見人申立てを躊躇する」とおっしゃる事故被害者家族が多くいます。

このような意見があることも踏まえて,成年後見制度が適切に運用されるようになれば良いと思います。