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賭博罪について

最近,賭博行為に関して話題になっており,マスコミなどでも様々な弁護士が説明していますが,賭博罪に関して検討したいと思います。

刑法の条文では,185条において,賭博をした者は,50万円以下の罰金または科料と定められており,但し書きで,一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは,この限りではないと定めています。

刑法の条文の解説書(条解刑法参照)では,「賭博」とは,偶然の事情に関して財物を賭け,勝敗を争うことをいうとされています。

したがって,最近話題となっている賭けマージャン行為については,「賭博」行為に該当すると考えられます。

次に,但し書きの「一時の娯楽に供する物を賭けた」という条件に当てはまるかどうかが問題となります。

裁判例の主流は,金銭は性質上,一時の娯楽に供する物には該当しないとされています。

しかし,極めて低額な場合などは,一時的な娯楽とみて賭博罪とすべきではないという見解あるようです。

では,テンピンというレートが,低額であるため処罰されるべきではないといえるのでしょうか。

刑事実務においては,掛け金が低額なことを理由に不起訴処分で終わるということもあると思いますが,過去の裁判例で次のような判断が示されています。

事案としては,賭博開張図利被告事件のため,今回の賭博罪の場合と同様に考えてよいかは議論があると思いますが,京都地方裁判所で次のような裁判例(平成24年11月5日判例)があります。

1000点を100円として計算する「テンピン」や1000点を50円として計算する「テンゴ」で賭け麻雀を行っていた案件ついて,『本件麻雀店で行われていた賭麻雀においては,40分ないし1時間程度のゲームごとに,「テンピン」のレートでは,数千円を超える金銭がやり取りされ(「ウマ」のルールにより,少なくとも3000円はやり取りされることになる),「テンゴ」のレートにおいても,その半額程度の金銭がやり取りされていたことが認められる。A氏が参加した「テンピン」のレートでの賭麻雀においても,1回の半荘で,7300円の勝ちと約5400円の負けが生じている。』と認定したうえで,

『上記のとおり,決して低廉とはいえない金銭のやり取りがされる賭麻雀をさせていた』と判断して,低レートだから違法性が無く無罪だという弁護人の主張を認めませんでした。

この裁判例は賭博罪の裁判例ではないですし,店側も客からいろいろと金銭を徴収したりしていることもあるので,賭博罪でも直ちにこの裁判例を参考にすべきとまではいえないと思います。

しかし,最近話題の「テンピン」レートの賭けマージャン行為が,低レートだから懲戒処分としないというロジックについては,弁護士として疑問が残るところです。