安全配慮義務について
最近、弁護士業務で、交通事故の相談だけでなく、プレス機に手を挟んで指を切断したなどというような、仕事中の事故による労働災害事件の相談にのることがあります。
労働災害事件について、交通事故と大きく異なる点として、そもそも使用者側が賠償責任を負うのかという点があると思います。
すなわち、交通事故の場合は、多くの場合、運転手の過失があるから事故が発生するため、運転手の過失の存在自体が争われることは少ないです(過失割合がどの程度かという点は、争われます)。
しかし、労働災害の場合、使用者である会社が、安全配慮義務を怠っていたか否か(そもそも会社に過失があるのか)が問題となってきます。
この安全配慮義務というものをどのように考えれば良いのかという点について、いろいろと文献を調べていたのですが、少し古いのですが興味深い文献がありました。
中央労働災害防止協会が編者となっている「裁判例にみる安全配慮義務の実務」という書籍です。
その書籍の中では、安全配慮義務の範囲を段階的に分け、労災補償義務の範囲と安全配慮義務の範囲が、どのような状態で分かれているかについて図示したうえで、具体的に解説されていました。
少し前の書籍であり、その後に出た裁判例をカバーしていないので、多少の変更点はあるかもしれませんが、安全配慮義務についてわかりやすく説明されており、理解が進む書籍であると感じました。
残念なことに上記書籍が絶版になっているため、古書店で入手するか図書館で借りて読むしかないのですが、安全配慮義務について知るために、良い本であると思いました。