道路標示について
交通事故事件を扱っていると、道路標示について検討する場合があります。
道路標示とは、道路に白色で記載されている速度の標示などがあります。
(例えば、30と道路に記載されていれば、その道路は最高速度が時速30kmの道路であり、それ以上の速度で走行してはいけないというような標示です。)
それでは、この道路標示は、長さなど自由に書くことができるのでしょうか。
道路標示については、道路法45条が委ねている、道路標識、区画線及び道路標示に関する命令において、詳しく決められているので好き勝手に記載できるわけではありません。
街中で道路標示を作成している工事の方も、上記命令に定められている基準に従って、作成していることになります。
道路標示の一般的な内容については、以上のとおりです。
ここからが本題となりますが、交通事故事件を扱っていて、相談者の方から言われることとして、「相手側の道路に停止線があったので、相手の方が悪いはずだ」ということがあります。
この「停止線」というものが、曲者であり、弁護士がアドバイスをするときに注意して確認する必要があります。
何が曲者かというと、停止線と見える白線の中にも、規制を伴っている停止線と規制を伴っていない停止線があります。
規制を伴っている停止線とは、停止線のそばに「止まれ」の赤色の道路標識が立っている場合です。
このケースでは、一時停止無視をすることは道路交通法違反にも該当することとなり、一時停止規制のある側の方が劣後する関係にあります。
そのため、停止線のある側の相手方と停止線の無いほうの相談者の方では、相談者の方が言う「相手の方が悪いはずだ」という発言は正しくなります。
一方、「止まれ」看板がない場合には、「ここで止まったほうが安全ですよ」というくらいの意味合いで白線が引かれているので、停止線のある相手の方に法律上の義務が無い以上、交差点通過時の注意義務を負う点では、相談者の方と同様の立場になることになります。
そのため、単純に、「相手方の方が悪い」とは言い切れなくなってきます。
この場合には、どちらが左方であったのかとか、道路の幅が広いのはどちらの方であるのかなどといったほかの要素を確認していく必要が出てきます。
近時の裁判例の中には、「交差点入口に設置された停止線のみでは道路交通法上の一時停止規制の効果は生じないものの、本件交差点における上記道路の幅員の差異や道路工事の状況、本件交差点の見通しの悪さを踏まえれば、・・・・相応の注意を促すものであったと評価すべきである」(名古屋地裁令和3年9月29日裁判例)と判断したものもあり、他の要素の考慮を行って過失割合を判断しているものもあります。
このように、停止線の問題については、複雑な判断を求められることもあることから、このような事案にあたった場合には弁護士にご相談されることをお勧めいたします。