評価損について
最近、令和8年の民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(通称「赤い本」)が出たため、中身を読みました。
赤い本の講演録は、交通事故に携わる弁護士であれば、必ず目を通さなければならない書籍になると思います。
講演録とは、東京地方裁判所の民事27部(交通事故事件の専門部)の裁判官が、年1回、講演を行っており、この講演内容が日本全国の交通事故裁判実務・保険会社実務に大きな影響を与えています。
ちなみに、当職の感覚にすぎず統計を取ったわけではないので何の根拠もないのですが、昨年の講演録に収録された、駐車場内事故における過失割合に関する記事が出た後から、駐車場内事故の過失割合の交渉が難航し、裁判所でも解決が難航しているような感じを受けています。
それほど影響力が大きい文献です。
今年の赤い本の講演録の内容では、すべての講演内容の記事が参考になったのですが、とりわけ車両の評価損の記述が大変参考になりました。
評価損は、交通事故を扱う弁護士であれば、相談者の方から必ず聞かれるポイントですので、今回の記事は有益でした。
今までも赤い本の講演録で、評価損については平成7年・14年に記事が掲載されていたのですが、時間が経過していることに加えて、昨今、評価損の請求が増えていることから、改めて検討されたとのことです。
この講演録の記載の中で、評価損の目安として次のような記述がありました。(なお、あくまでも目安であり基準ではないことに注意が必要だと思います。)
① 評価損が修理費の30%
高級車であり、初度登録から1年未満、走行距離が1万㎞未満、修復歴表示義務がある骨格部分の損傷という条件の全てを満たす。
② 評価損が修理費の20%
高級車であり、初度登録から6月未満、走行距離が1万km未満、一定の損傷があるものの骨格部分の損傷が無いという条件の全てを満たす。
①と②を比較すると、骨格部分の損傷の有無で、②の方が初度登録がより短くなっている点で条件が厳しくなっています。
また、②の目安については、「一定の損傷」とは、どの程度の損傷を意味するのか?が、新たな争点になりそうな気がしました。
③ 評価損が修理費の10%
以下のア又はイのいずれかに該当する。
ア 外国製の高級車で、初度登録から3年以上5年未満、走行距離が2万㎞程度、骨格部分の損傷が無いのすべての条件を満たす。
イ 国産の高級車で、初度登録から1年~2年程度、走行距離が1万km~2万㎞、骨格部分の損傷が無いのすべての条件を満たす
これを見ると、ベンツかレクサスかで違いが生じ、レクサスの方が条件が厳しいようです。
(ベンツもレクサスも結構高いのに、この差がつく理由がよく分からないです。)
以上のとおりの記載があり、従来と比べてより明確になっていると感じました。
おそらく、評価損の争いが多くなりすぎており、裁判の方向性を示さなければ訴訟が頻発するとの危機感からかもしれません。
評価損については、争いが激しい部分であり、交通事故に関する相談は弁護士にされることをお勧めします。
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