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破産管財における財団債権の弁済

破産管財事件において、管財人が行う行為として財団債権の弁済があります。

財団債権の中では、税金の支払が多いですが、会社の破産の場合、従業員の方へ未払賃金の支払を行う必要がある場合があります。

管財人から、従業員の方に対して、「賃金の支払いをします。受け取りに来てください」と伝え、受取りに来てくれる場合には問題ないのですが、支払期日に受取に来てくれない場合はどうなるのでしょうか。

配当の場合には、破産法202条に基づく供託ができるとされているのですが、財団債権の弁済の場合にはそのような規定はありません。

この場合、支払期日に支払いを受領しない財団債権についても、供託をすることができますが、根拠条文が民法494条第1項第1号の受領拒絶として、供託をすることになります。

考えてみれば当然のことなので、あまり書籍には記載されていないのかもしれないのですが、不安だったので色々な書籍を調べて裏付けを取ろうとしましたが、明示的に記載されている書籍がほとんどなく、発見できたのは愛知県弁護士会が出している破産管財人のための破産法講義という書籍だけでした(見逃していたらすみません。)。

念のため、法務局の担当者の方に確認したら、民法494条第1項第1号を根拠条文として問題ないとのことでしたので、それで供託をすることができました。

なお、供託書の供託の原因たる事実の部分は、法務局のホームページに記載されている、破産法202条に基づく配当金の供託の文例を少し改変することで受け付けてもらえました。

私が普段やっている弁護士の業務上、供託手続きなどはほとんどすることが無いので、いざ供託するとなると、色々疑問が出てきて、大変勉強になりました。



安全対策について

交通事故事件を扱っていて、シートベルトの着用をしていなかったり、チャイルドシートの設置がなされていなかったりするケースが時々あります。

2008年に、後部座席のシートベルト着用を義務付けられてから10年以上経過しますが、後部座席でのシートベルトの未着用というケースはあるようです。

シートベルトをしていない場合、後部座席に乗車中の人の怪我を防ぐことが困難になるという点で、シートベルトの着用は必ず行うべきであると思います。

では、交通事故の賠償問題において、シートベルトの未着用はどのように扱われるのでしょうか。

様々な事故の類型があり、単純に回答することはできないのですが、シートベルトを着けていなかったことが原因で損害が大きくなっているケースなどでは、10%ほどの過失相殺がなされていることがあります。

通常は、後部座席に乗っているだけであれば、過失割合の問題にはなりにくいのですが、シートベルト未着用という点は、後部座席に乗車している人にも責任があると考えられるため、10%ほどの過失がとられることがあるようです。

もっとも、健康上の理由などで、法律上、シートベルトを着用することが免除されているケースにおいては、過失割合については、別途検討する必要が出てくると思います。

では、免許の点数についてはどのような扱いになるのでしょうか。

一般道路において、後部座席に乗車中の人がシートベルトの着用をしていなかった場合、運転者の免許の点数は引かれません。

高速道路の場合は、後部座席に乗車中の人がシートベルトを着けていなかった場合には、1点減点されます。

このように、免許の点数の減点の有無だけで考えると、一般道路におけるシートベルト着用義務はないのではないかとの誤解が発生しそうです。

しかし、法律では着用が義務付けられていますし、賠償においても過失相殺される可能性もあるので、シートベルトの着用は必須であると思います。

交通事故被害に遭い、賠償問題において、シートベルト着用の点で問題になっている方は、弁護士に一度ご相談ください。



病院を閉院するとき

あまり気にかけていなかったことですが、病院を閉院する場合には、様々な手続きをとる必要があるということについて学ぶ機会がありました。

病院を廃止する場合、診療所廃止届というものを病院を管轄している保健所に提出する必要があります。

X線装置を持っている場合は、エックス線装置廃止届も保健所に提出する必要があります。

これらの届け出は、開設していた人などが持参してほしいとのことでした。

この届出を提出するとともに、提出時に控えを貰ってくる必要があります。

控えを貰ってきたら、保険医療機関廃止届を管轄の厚生局に提出するときに、控えも一緒に提出します。

また、生活保護の対象の医療機関になっている場合には、区役所の保健センターに、生活保護法の法律指定医療機関の廃止届を提出することになります。

このように、普通の会社などの倒産手続きにはない、様々な廃止届を出して、病院が廃業したということを各所に通知していく必要があるようです。

ここまで様々な手続きをとる必要性があるのか?とも感じましたが、病院が廃業することは、地域の医療体制に多大な影響を与えるので、きちんと行政機関に報告をさせることで、医療体制確保を図る目的でもあるのかなと感じました。

これを学んでいて、弁護士は、弁護士会に届出を出しているだけなので、様々な手続きをとる必要性が少ないなと感じました。

病院の閉院については、様々な法律問題が絡んでくるようですので、閉院についての法律問題については、弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

 



交通事故と障害年金

交通事故被害に遭われた方で、障害年金を申請する場合があります。

軽傷の場合は障害年金が問題になることは少ないですが、高次脳機能障害などを伴う、重傷事案になる場合には障害年金を検討することが出てきます。

良くある流れとしては、入院している病院で、介護などの相談にのる担当の方がいるので、その方から障害年金の申請を検討してみてはどうかと紹介されて申請することが多いようです。

もっとも、その案内をしてもらえない場合もあると思いますので、高次脳機能障害などを認定されるケースでは、障害年金の検討もしていくことも必要です。

障害年金の手続きの請求は、年金請求書や診断書、病歴・就労状況申立書を、年金事務所に提出します。

その他にも、第三者行為事故状況届や交通事故証明書や損害保険会社等への照会に係る同意書などが必要となってきます。

第三者行為事故状況届は、年金事務所で取得できますが、交通事故証明書というものは年金事務所で取得することはできません。

交番や警察署で「事故証明書を取得したいので、申込用紙を下さい」と言えば、申込用紙を貰えます。

申込用紙に必要事項を記入して、郵便局などでお金を払い込めば、郵便で送られてきます。

但し、事故から5年以上(物件事故だと3年)経過していると発行してもらえなくなるので早めに入手しておく必要があります。

障害年金については、自賠責保険での後遺障害等級とは異なる基準で障害認定がなされますので、自賠責で認定された後遺障害等級と障害年金で認定された等級が関連するわけではありません。

但し、自賠責保険で重い等級が認定されているケースの場合、障害年金でも重い等級が認定される可能性があります。

障害年金を検討される方は、弁護士に相談されてみることも良いかもしれません。



相続財産管理人について

事故の加害者が任意保険に加入しておらず、そのまま死亡した場合、どのようになるのでしょうか。

特に、加害者が天涯孤独の身で、身内がいないような場合、どうすればよいのでしょうか。

加害者に不動産などの財産がある場合、この不動産を処分して、賠償金に充ててもらいたいと思います。

しかし、被害者が勝手に不動産を売却するわけにはいきません。

このような場合、相続財産管理人という制度を使うことが考えられます。

相続財産管理人とは、簡単に言うと、相続人となる人がいるかどうか不明の場合、亡くなった加害者の財産を処分してくれる人です。

家庭裁判所に申し立てをすることで、相続財産管理人を選任してもらいます。

そして、相続財産管理人に、亡くなった加害者の財産を処分してもらいます。

その財産を処分して得たお金で、被害者に対し、賠償金を払ってもらうことになります。

もっとも、相続財産管理人の制度は、簡単に利用できるものではなく、裁判所に支払うお金が数十万円(名古屋の場合70万円程度)のお金(予納金)が必要となってきます。

さらに、裁判所にお金を支払って相続財産管理人が処分した財産があまり高く売れなかった場合などは、賠償金を回収できない可能性もあります。

相続財産管理人の制度を利用して賠償金の回収を図るという法的制度はありますが、必ず回収できるかわからず、しかも、裁判所に多額の予納金をおさめる必要があることから、慎重に判断する必要があります。

このような負担を回避するために、自身の加入している保険で対応できるのであれば、自身の加入する保険で支払ってもらうということも選択肢の一つとなります。

お困りの際は、弁護士にご相談されることをお勧めします。



控訴・附帯控訴について

裁判は、第1審・控訴審・上告審というように、全部で3回裁判が受けることができるようになっています。

控訴審に控訴するとは、第1審の裁判所の出した判断の内容に不服がある場合、もう一度判断を求めるために裁判を起こすということを意味します。

控訴の期間は判決送達日の翌日から2週間以内に起こす必要があります。

控訴の期間が間に合わなければ、それだけで終了となるため、控訴期間の計算は極めて重要な作業となります。

最近は郵便事情が悪いので、私自身が、電車に乗って第1審の裁判所にまで控訴状を提出しに行ったこともあります。

では、附帯控訴とは、何なのでしょうか?

普通の控訴とは何が違うのでしょうか?

ざっくばらんに考えると、附帯控訴とは、積極的に第1審判決に文句があるわけではないので、控訴を積極的にするわけではないが、控訴されたのであれば、控訴された側が不満がある部分について、審理しなおしてくださいという制度です。

このように、附帯控訴をすれば、不利益変更禁止の原則が解消され、控訴した側に不利益な判断をすることができます。

この附帯控訴の良いところ(?)は、控訴の際に設けられていた2週間以内という制限が無く、いつでも附帯控訴をすることができる点です。

もっとも、附帯控訴はあくまでも、控訴審の手続きの存在が前提になります。

そのため、相手方が控訴を取り下げたりした場合には、附帯控訴も効力を失ってしまいます。

したがって、積極的に不服がある場合には、公訴を提起することをお勧めします。

控訴・附帯控訴について詳しいことは、弁護士に相談されることをお勧めします。



労災手続について (後遺障害について)

労働災害に遭い、怪我をした場合、治療をしていくこととなります。

怪我をしても完治しなかった場合にはどのようにすればよいのでしょうか。

この場合、障害(補償)給付の申請手続きを取ることになります。

障害(補償)給付の手続きとはどのような手続きでしょうか?

これは、後遺障害が残った場合、主治医に診断書を作成してもらい、障害(補償)給付の申請手続きを取ることで、1級~14級の後遺障害等級が認定されることとなり、等級に応じて年金あるいは一時金が支給される手続です。

1級~7級までは、給付基礎日額×支給日数分の年金と一時金が支給されます。

年金については、被災者が死亡するまで支給されることとなります。

8級~14級までは一時金が支給されることになります。

一時金ですので、年金のように継続してもらえるわけではありませんが、残存した後遺障害等級に対応した金額の一時金が支給されることになります。

ここで、障害(補償)給付を受けることができる場合、他の制度でも補償を受けることができる場合があるため、そちらも忘れずに申請する必要が出てきます。

具体的には、障害年金および自賠責保険による後遺障害の制度です。

自賠責保険による後遺障害の制度とは、労働災害が自動車事故によって発生している場合、自賠責保険に後遺障害の申請を行うことができます。

自賠責保険に後遺障害の基準は、労災保険の認定基準を準用しているため、労災保険で認定された後遺障害等級と同様の等級が認定されて、自賠責保険からの補償を受けることができます。

但し、自賠責保険と労災保険は審査する機関が別組織であるため、等級認定に差が生じる場合もあり、全ての場合に両者の審査結果が一致するわけではありません。

自賠責保険と労災保険を利用できる場合、労基署では「先に自賠責保険を申請してください」と案内されることもあるようですが、申請に順番はありません。

そのため、労災保険→自賠責保険という順番で申請をしても問題ありませんが、支給調整がありますので、後から自賠責保険を得た場合には、労災保険に返金する必要が出てくる場合もありますので注意が必要です。

さらに、障害年金の制度があります。

障害年金の制度は、一定の重度の障害が残存した場合、障害年金の申請を行うと、労災年金との支給調整はありますが、双方から年金が支給されるため、この手続きも忘れないようにしたほうが良いです。

このように、労災によって後遺障害が残った場合には、利用できる様々な制度があります。

それぞれの制度の内容を把握しながら、申請手続きを進めていくことは大変です。

ご不明な点等ございましたら、弁護士に相談されることをお勧めします。



労働災害について

弁護士業務の中で、労働中の事故による怪我をした方からのご相談を受けることがあります。

相談の内容として、仕事中に怪我をしたが、会社が労災手続をとってくれないという相談があります。

このような場合、どのようにすればよいのでしょうか?

労災の申請手続きが、一般的には会社を通じて行われているため、会社が申請してくれなければ労災が利用できないと思われている方も多いです。

しかし、労災手続を会社が取ってくれない場合でも、仕事中の事故で怪我をした場合、労災を利用することはできます。

そのため、「会社が証明してくれません」という添え書きをつけて、労基署で労災の申請手続きをとれば、労災の利用はできることとなります。

したがって、会社が労災を利用させてくれないという場合には、労基署でその旨を申告して相談されると良いと思います。

また、怪我をした場合に治療を受ける際は、労災病院や労災指定の病院で治療を受ければ、窓口負担なく治療を受けることができるので、被災者の方にとっては経済的負担が軽減されるので、良いと思います。

治療期間中に、転院する場合には、どのようにすればよいのでしょうか。

転院する場合には、転院後の労災指定医療機関等に対して、「療養(補償)給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」という書類を提出することになります。

労働災害で大きなけがをした場合、当初は手術などを対応する大きな病院に通院していたが、その後のリハビリ等は近所の整形外科で対応するなどというケースもあるため、この変更手続も必要となることが多いです。

その他、休業(補償)給付の申請を行う必要も出てきます。

これは、怪我をして仕事を休まざるを得なくなった場合に、労災保険から休業期間中の補償を受ける制度です。

基礎日額の60%+20%の特別支給金が支給されるため、被災して休業を余儀なくされている場合は、早めに申請手続きを取られることをお勧めします。

特に、休業(補償)給付は、生活費に直結するため、休業(補償)給付が支給されるまでの間、自身の貯金で生活することが余儀なくされることとなります。

休業(補償)給付の申請が遅れれば、その分支給が遅れるので、早めの手続きが重要です。

労災手続には、様々な手続きが必要となり、容易にできる手続きもあれば、手続きに手間がかかる手続きもあります。

これらの手続きは、会社が協力してくれれば容易に行えますが、会社が協力をしてくれない場合には、手間がかかる手続きが多いです。

労働基準監督署で問い合わせをしながら申請を行うことでも良いと思いますし、お近くの弁護士に相談されることもよいと思います。



人身傷害保険には加入すべきか?

任意保険に加入するとき、対人賠償保険や対物賠償保険に加入することは当然のことだと思います。

この他に、治療費や慰謝料などの実際の損害を過失割合に関わらず支払うという保険である人身傷害保険や、搭乗者保険という保険をつけておくべきなのでしょうか。

保険料が値上がりすることから、対人賠償保険・対物賠償保険に加入していれば十分だと考える方もおられます。

また、自分は運転が上手だから、事故は起こさないので、万が一のときのための対人・対物賠償だけで十分だと考える方もおられます。

しかし、弁護士の目から見ると、人身傷害保険だけはつけておいたほうが良いのではないかと考えています。

なぜならば、運転が上手な方で事故を起こさない方でも、任意保険未加入で無資力の加害者の運転による追突事故を100%避けることは不可能だからです。

このような場合、高額な治療費などは、加害者が支払うことが困難であれば、被害者自身で支払わざるを得ません。

事故に遭ったうえに、費用まで負担するということを防ぐためにも、人身傷害保険に加入しておく必要があります。

このように、人身傷害保険は、無保険の車との事故に遭った場合に自身を守るためにつけておく必要があります。

自動車保険については、複雑な契約内容になっていることが多いですが、対人・対物・人身傷害保険は無制限で加入しておくことが良いのではないかと考えます。



他車運転特約

車を運転する際に自動車の任意保険に加入しておくことは、万が一、交通事故が発生したときのために必須事項であると思います。

しかしながら、たまたま、他人の車を運転するという状況もあり、そのような状況で事故が発生したときはどのようになるのでしょうか。

ここで、他車運転特約という特約が問題となってきます。

他車運転特約とは、被保険者が、被保険者、その配偶者や未成年の子、同居の親族が所有する自動車以外の自動車を運転する場合に、その運転中の自動車を被保険自動車とみなすという特約です。

この特約に関しては、被保険者等が「常時使用する自動車」は特約の適用から除外されます。

では、「常時使用する自動車」とは何を意味するのでしょうか。

文言がいろいろと解釈できる余地があるため、裁判で争われていることが多いです。

この判断基準については様々な裁判例で議論されているところですが、使用回数、使用目的、使用に関する裁量の範囲(場所・時間)、使用期間などを総合的に考慮して、常時使用する自動車かどうかを決定しているようですが、この判断が難しいです。

同じ事情の下でも、地方裁判所では、借りていた車につき使用目的が限定的だという認定をして常時使用する自動車であることを否定したが、高等裁判所では、包括的な使用許可があり、期間も一時的ではないとして常時使用する自動車であることを認めたという判例があります。

このように、他車運転特約は、判断が難しい部分がありますので、他車運転特約の存在があるとしても、万が一のときのため、自身が運転する車には任意保険をつけておくことをお勧めしますし、弁護士へのご相談をお勧めします。



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