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日々思ったこと,皆様のお役にたてる情報などを書いていきたいと思います。


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EDR

先日、イベント・データ・レコーダー(EDR)が、2022年7月以降に国内で販売されるすべての新型車に搭載されるように、国土交通省が省令を改正するというニュースを耳にしました。

EDRとは、車の速度やエンジンの回転数、アクセル・ブレーキの踏み具合などを記録する装置です。

EDRがついていると、事故の直前に運転手がどのような運転行動をとっていたかが分かるとされています。

現在販売されている車の中にも、既にEDRがつけられている車はあります。

そのため、2022年以降義務付けるという省令改正は、現状追認のような感じがあり、EDR設置が義務付けられたからといって、車の値段が上がるという関係にはないような気がしています。

 

このEDRという装置は、運転手がどのような運転行動をとっているかを記録するため、事故の分析に役立つとされています。

東池袋で起こった自動車暴走による死傷事故でも、EDRのデーターが利用されていると言われています。

では、一般的な交通事故でEDRが活用されていないのはなぜでしょうか。

恐らくですが、EDRを分析してレポート化するCDRアナリストの数が足りないからだと思います。

EDRデータがあったとしても、それを取り出す人材がおらず、人材がいたとしても費用が高額になるとするならば、利用数が少なくならざるを得ないと思います。

そのため、交通事故の過失割合の判断には、EDRより、ドライブレコーダーの方を活用しやすいので、そちらが利用されているのだと思います。

交通事故を扱う弁護士としては、EDRの利用がより広まれば、より良い解決ができるのではないかと思います。

ちなみに、愛知県弁護士会には、EDRを研究するチームも存在しており、そこで詳しく研究されています。



高次脳機能障害

日弁連交通事故相談センターの高次脳機能障害相談研修会の参加してきました。

昨年はコロナの影響により中止されていた研修会でしたので、久々に開催された研修会でした。

内容としては、高次脳機能障害認定・等級評価の基礎と最近における等級認定変更裁判例の傾向という2本立ての講演でした。

それぞれの講演は、交通事故に精通されている弁護士による講演でしたので、大変参考になるものでした。

高次脳機能障害認定・等級評価の基礎は、高次脳機能障害問題の歴史的背景から始まり、高次脳機能障害に関する概念が医学的概念と行政用語の概念が存在していること、自賠責での認定手法などを、短時間でコンパクトに説明されており、非常に分かりやすい内容でした。

大変複雑な内容を、コンパクトに解説していただけたおかげで、頭の整理ができて高次脳機能障害に関する理解が進みました。

後半の最近における等級認定変更裁判例の傾向については、平成27年以降の多数の裁判例を検討したうえで、裁判でどのような変更がなされているかを分析されており、非常に有益な内容でした。

私自身が扱っている交通事故案件においても、高次脳機能障害の後遺障害を抱えられている依頼者様がいますが、裁判において争っていくうえでどのような点に着目していくべきかという点が、よりクリアに理解できたと思います。

今回の研修は、交通事故を取り扱う弁護士を対象にした研修でしたが、大変ためになる講演内容でした。

今後も、このような有益な研修・講演があれば積極的に参加していき、少しでも依頼者様のお役に立てるようにしていきたいと思います。

 

 



強制執行

交通事故に関する損害賠償請求を行っていると、加害者が任意保険に加入していないという事案にあたることがあります。

通常は、加害者が任意保険に加入しているので支払いを受けることに問題は起きませんが、任意保険に加入していない場合には、支払いを受けることが困難になることがあります。

物的損害に関しては、自賠責保険も利用できないので、賠償金の支払い確保は困難を極めます。

加害者相手に裁判をして強制執行をする方法がありますが、強制執行をするべき財産の調査はどのようにすればよいのでしょうか。

一つ目は、銀行などの第三者から情報を入手する手続きになります。

民事執行法207条に規定されていますが、判決を持っている被害者の方が、裁判所に情報提供手続をとることで、申立人が指定した銀行から、どこの支店に、いくら残高があるのかを回答してくれることになります。

二つ目は、財産開示手続きがあります。

この手続きは以前から存在しましたが、昨年から財産開示手続きに対して、拒否したり嘘をつくと刑事罰が科せられることになりました。

そのため、最近では、神奈川県で警察が検察官に送致したり、北海道で告発されていたりしており、民事裁判の結果を無視して逃げ得されないようになってきているようです。

このような手続きを利用して財産調査をしていくことになりますが、支払い能力自体が無ければどうしようもないので、交通事故を扱う弁護士としては、やはり自動車を運転する以上は任意保険には加入していて欲しいと思います。



MRIについて

弁護士業務をしているなかで、交通事故の被害者の方が、MRIを撮影することは多いです。

このMRIについて性能の問題というものがあります。

MRIの性能を示す単位として「テスラ」という単位があります。

このテスラの数が大きければ大きいほど、性能が良い機械ということになります。

今までに聞いた中で、一番低いテスラ数は、0.4というものがあります。

1.5テスラというMRIの数が多いようです。

3テスラになるとかなり数が限られてきて、大きな病院に行かなければならないようです。

過去に1.5テスラで撮影しても映らなかったが、3テスラで撮影してみると痺れの原因となる圧迫所見が見つかったというような事例もあり、機械の性能というものは軽視できないものがあります。

それでは、3テスラ以上のMRIは存在するのでしょうか。

調べてみたところ、2018年時点では、全世界で70台ほど、日本では、新潟大学・岩手医科大学・大阪大学・京都大学・生理学研究所などに7テスラのMRIが存在するようです(その後増えているか否かは、わかりませんでした)。

7テスラのMRIは、単純に考えても3テスラの倍以上ですので、より脳の状態が鮮明に見えると考えられることから、高次脳機能障害で画像所見が認められないなどの事案の場合に利用できるようになっていけば、より被害者救済が図られ、紛争解決に資するのではないかと考えます。

7テスラの機械は、まだまだ少ないようですが、3テスラの機械が普及してきているスピードからすると、近い将来、7テスラのMRIも普及してくるのではないかと期待します。

なお、キャノンメディカルシステムズという会社のホームページによると、同社のMRIは7テスラ相当の画質を目指し開発を進めていると書かれていたので、通常の3テスラの機械より鮮明化されているのかもしれません。



安全配慮義務について

最近、弁護士業務で、交通事故の相談だけでなく、プレス機に手を挟んで指を切断したなどというような、仕事中の事故による労働災害事件の相談にのることがあります。

労働災害事件について、交通事故と大きく異なる点として、そもそも使用者側が賠償責任を負うのかという点があると思います。

すなわち、交通事故の場合は、多くの場合、運転手の過失があるから事故が発生するため、運転手の過失の存在自体が争われることは少ないです(過失割合がどの程度かという点は、争われます)。

しかし、労働災害の場合、使用者である会社が、安全配慮義務を怠っていたか否か(そもそも会社に過失があるのか)が問題となってきます。

この安全配慮義務というものをどのように考えれば良いのかという点について、いろいろと文献を調べていたのですが、少し古いのですが興味深い文献がありました。

中央労働災害防止協会が編者となっている「裁判例にみる安全配慮義務の実務」という書籍です。

その書籍の中では、安全配慮義務の範囲を段階的に分け、労災補償義務の範囲と安全配慮義務の範囲が、どのような状態で分かれているかについて図示したうえで、具体的に解説されていました。

少し前の書籍であり、その後に出た裁判例をカバーしていないので、多少の変更点はあるかもしれませんが、安全配慮義務についてわかりやすく説明されており、理解が進む書籍であると感じました。

残念なことに上記書籍が絶版になっているため、古書店で入手するか図書館で借りて読むしかないのですが、安全配慮義務について知るために、良い本であると思いました。



ウェブ裁判

最近、地方裁判所の裁判において、裁判所から「ウェブ裁判を利用しますか?」と聞かれることが増えてきました。

このウェブ裁判というものの導入経緯は、次のような経緯です。

2018年3月に、裁判手続等のIT化検討会が、民事裁判手続きのIT化を3つの段階(フェーズ)を経て実現することを提言していました。

そこでは、2019年度中に、特定の裁判所で、ITツールを積極的に利用して争点整理の試行・運用を開始することとされていました。

そのような状況の下で、昨年からのコロナウイルスの猛威による影響もあるためか、ウェブ裁判の利用が急速に広まっていったというような印象を持っています。

では、ウェブ裁判とは、どのようなものでしょうか。

私がよく経験する場面は、訴訟の中で争点整理を行う場面(争点整理のための期日)において、ウェブを利用して行う場面です。

流れとしては次のとおりです。

マイクロソフト社のteamsというソフトをパソコンにインストールしておきます。

ウェブ裁判で進めると決まれば、事前に招待され、裁判の当日になったら、時間までにパソコンを立ち上げ、裁判所からの呼び出しに応答して、手続きを行うというような流れです。

最初は、使い方が分からず慣れませんでしたが、複数回経験することによって、利用することに抵抗感は無くなりました。

この手続きは、書面による準備手続きという現行法の制度を利用して行われています。

裁判所に行く必要がなくなるため、弁護士としてはありがたい手続きですが、ウェブ裁判の利用についてどこまで広がるのかが気になるところです。



祝日について

内閣府のホームページに、来年(令和3年)の祝日に関する情報が掲載されていました。

それによると、令和3年7月19日の海の日の祝日は7月22日に移動し、令和3年10月11日のスポーツの日の祝日は7月23日に移動し、令和3年8月11日の山の日の祝日は8月8日に移動するとのことです(8月9日は振替休日)。

祝日の移動があるので、現在のカレンダーの表記とは異なることになります。

弁護士が使う手帳である弁護士日誌は、改正前の祝日の表記になっているため、手帳の修正を行っておく必要があると思います。

ところで、祝日の移動について、自由に行うことができるのでしょうか。

これに関しては、自由にできるのではなく、法律による変更が必要です。

オリンピックに合わせた祝日の移動についても、令和2年12月4日に「平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法等の一部を改正 する法律」が公布されています。

この法律の第1条第2項では、次のように記載されています。

令和三年の国民の祝日に関する祝日法の規定の適用については、 祝日法第二条海の日の項中 「七月の第三月曜日」とあるのは「七月二十二日」と、同条山の日の項中「八月十一日」とあるのは「八月八日」と、同条スポーツの日の項中「十月の第二月曜日」とあるのは「七月二十三日」とする。

この法律があるので、最初に記載したように、祝日の移動を行うことができます。

そして、「平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」で次のように施行日が定められています。

内閣は、平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法等の一 部を改正する法律(令和二年法律第六十八号)附則第一項の規定に基づき、この政令を制定する。

平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法等の一部を改正 する法律の施行期日は、令和二年十二月二十八日とする。

したがって、令和2年12月28日に、来年の祝日が現実に移動することとなりました。

このように祝日という休みについても法律で定め、その移動についても法律で定めることが必要であり、法律によって国が動いているということがわかる格好の事例ではないでしょうか。

なお、今年はコロナによる影響でオリンピックが開催できませんでしたが、来年こそはコロナが収束して、以前のような生活が過ごせることを願っています。そして、オリンピックが無事開催されて、祝日の移動が無意味ではなかったという風になればよいと思います。



飲酒運転について

先日、芸能人の方が飲酒運転で逮捕されたというニュースを見ました。

名古屋地域ではコロナの影響で、忘年会などのイベントが減少傾向にあると思いますが、年末が近づき、お酒を飲む機会も増えるため、弁護士の立場から、飲酒運転について、法律的に考えてみたいと思います。

飲酒運転で問題になる法律として、道路交通法と自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律があります。

道路交通法では、酒気帯び運転(117条2の2第3号)と酒酔い運転(117条の2第1号)が罰則として定められています。

酒気帯び運転の罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています。

酒酔い運転の罰則は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金とされています。

なお、道交法117条の2の2第3号の中にある「政令」とは、道路交通法施行令のことであり、道路交通法施行令の44条の3では、身体に保有するアルコールの程度として、血液1mlにつき0.3mg又は呼気1Ⅼにつき0.15mgとするとされています。

次に、飲酒運転をして、交通事故を起こして人をケガさせたり、死に至らしめたりした場合には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の適用が問題となります。

この法律に規定されている第2条の危険運転致死傷罪や第3条が問題となります。

また、事案によっては第4条の過失運転致死傷罪が問題となるケースもあります。

もっとも重大な犯罪である危険運転致死傷罪の場合、人を負傷させた場合には15年以下の懲役、死亡させた場合には1年以上の有期懲役とされていますので、極めて重い刑が科されます。

以上に記載したように、飲酒運転については、重大犯罪として重い刑罰が予定されています。

飲酒運転をして交通事故を起こしたならば、他人へ取り返しのつかない損害を与えるだけではなく、自分にも重い刑罰が科せられる可能性があるため、飲酒運転をして得られるメリットは一切ありません。

したがって、飲酒運転は、絶対に行わないようにしていただければと思います。



交通事故とひき逃げ

先日,有名俳優の方が,車を運転中にバイクと事故を起こしたにもかかわらず,そのまま現場から立ち去ったとして逮捕された事件がありました。

弁護士として交通事故案件を扱っているため,ひき逃げされた被害者の方の苦悩を知っているため,ひき逃げ行為が無くなることを願っています。

この「ひき逃げ」という言葉をよく聞きますが,法律では,どのようになっているのでしょうか。

一般的に交通事故を起こして現場から立ち去る行為を「ひき逃げ」と呼んでいますが,法律上「ひき逃げ」という文言が出てくるわけではありません。

車を運転する人は,交通事故があったとき,直ちに車を停止させて,負傷者を救護する義務があります(道路交通法72条・救護義務)。

この救護義務違反(報告義務違反も含みうる)を怠っていることを「ひき逃げ」と呼んでいるのだと思います。

救護義務違反を行った場合,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金や10年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。

また,交通事故を起こして,相手方を負傷させた場合には,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の5条が適用されることとなり,7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金の刑罰が定められています。

もっとも,傷害が軽いときは,刑を免除することができるとも規定されているため,必ず処罰されるわけではありません。

さらに,事故を起こした場合,行政処分(免許の点数が引かれる)が行われます。

救護義務違反の場合,最低でも35点がひかれることとなりますので,初めての事故であったとしても免許取り消しになりますし,最低でも3年間は免許を取れないことになります。

このように,ひき逃げをすると,非常に重い刑罰や処分が科せられますので,事故を起こした際は,現場にとどまり誠実に対応することが求められています。



民法改正の影響

今年の1月に民法改正に関するブログを記載しましたが,民法改正に伴い自賠責保険の取り扱いなどの変更があったので,交通事故分野における民法改正の影響を記載しておきたいと思います。

自賠責保険においては,令和2年4月1日以降に発生した事故については,次のような取り扱いがなされています。

例えば,自賠責保険の慰謝料の基準として,従来は1日につき4200円であったところが,1日につき4300円となりました。

また,休業損害につき,従来は1日5700円とされていたところが,1日6100円となりました。

そのほか,入院中の看護料など,様々な損害項目において金額が変更されているため,令和2年4月1日以降に事故に遭われた場合には,損害額の計算において注意が必要です。

また,逸失利益を計算するときに利用するライプニッツ係数という係数についても変更が生じています。

令和2年3月31日までは,民事法定利率が5%でしたが,同年4月1日以降は,民事法定利率が3%となりました。

これは,5%の利率が世の中の実態に合致していないために変更されたのですが,民事法定利率が3%に変更されたことで,逸失利益を算定する際に利用するライプニッツ係数の数字も変わることになりました。

例えば,5年間のライプニッツ係数についてみてみると,従来は「4.3295」という係数を利用していましたが,4月1日以降の事故については「4.5797」という係数を利用することになりました。

このように,変更があるため,損害額を計算するときには注意を要します。

民法改正の影響については,複雑な部分があるため,弁護士にご相談されることをお勧めいたします。



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