ようこそ,弁護士 赤田光晴のブログへ
日々思ったこと,皆様のお役にたてる情報などを書いていきたいと思います。
私が所属する「弁護士法人心 名古屋法律事務所」のサイトはこちらです。
名古屋で弁護士業務を行っていると様々な裁判所に行くことがあります。
愛知県内にある地方裁判所だけでも,名古屋の本庁・一宮・半田・岡崎・豊橋の各支部があります。
簡易裁判所に関しては,名古屋・春日井・瀬戸・津島・一宮・犬山・半田・岡崎・安城・豊田・豊橋・新城と12か所存在しています。
ちなみに,上記の裁判所の中で行ったことが無い裁判所は,新城簡易裁判所だけで,他の裁判所はすべて行ったことがあります。
このように愛知県内だけでも,複数の裁判所がありますが,自由に裁判をするところを選ぶことができるのでしょうか?
どの裁判所に訴えを起こすべきかという点については,法律で決まっています。
基本的な考え方としては,請求金額が140万円を超えない場合には簡易裁判所に訴訟提起することになり,140万円を超えた場合には地方裁判所に訴訟提起をすることになります。(※例外はあります。)
次に,簡易裁判所あるいは地方裁判所に訴訟提起することは金額で分けられるということは分かったが,どこの裁判所に提起すればよいのでしょうか。
簡易裁判所の事件の場合,名古屋で訴えればよいのでしょうか,それとも豊橋で訴えなければならないのでしょうか。
この点については,交通事故の場合,基本的には,①被告の住所・居所を管轄する裁判所,②原告の住所を管轄する裁判所,③事故現場を管轄する裁判所の中から選ぶことになります。
したがって,豊橋の人同士の事故で,豊橋で事故が起こった場合には,豊橋の裁判所となります。(※例外はあります。)
なお,私が多く取り扱っている交通事故案件の場合,他県にお住まいの方や,あるいは愛知県の人が他県で交通事故に遭ったという場合も多くあります。
そのため,愛知県内の裁判所だけではなく,三重県や岐阜県の裁判所にも行くことが良くあります。
名古屋から比較的近い四日市の裁判所にも行くことがあります。
この度,当法人の11個目の事務所として弁護士法人心四日市法律事務所ができました。
今まで以上に,四日市市にお住いの方々のご相談にのることができると思います。
お気軽にお問い合わせいただけると幸いです。
なお,弁護士法人心四日市法律事務所については,こちらを参照ください。
最近,賭博行為に関して話題になっており,マスコミなどでも様々な弁護士が説明していますが,賭博罪に関して検討したいと思います。
刑法の条文では,185条において,賭博をした者は,50万円以下の罰金または科料と定められており,但し書きで,一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは,この限りではないと定めています。
刑法の条文の解説書(条解刑法参照)では,「賭博」とは,偶然の事情に関して財物を賭け,勝敗を争うことをいうとされています。
したがって,最近話題となっている賭けマージャン行為については,「賭博」行為に該当すると考えられます。
次に,但し書きの「一時の娯楽に供する物を賭けた」という条件に当てはまるかどうかが問題となります。
裁判例の主流は,金銭は性質上,一時の娯楽に供する物には該当しないとされています。
しかし,極めて低額な場合などは,一時的な娯楽とみて賭博罪とすべきではないという見解あるようです。
では,テンピンというレートが,低額であるため処罰されるべきではないといえるのでしょうか。
刑事実務においては,掛け金が低額なことを理由に不起訴処分で終わるということもあると思いますが,過去の裁判例で次のような判断が示されています。
事案としては,賭博開張図利被告事件のため,今回の賭博罪の場合と同様に考えてよいかは議論があると思いますが,京都地方裁判所で次のような裁判例(平成24年11月5日判例)があります。
1000点を100円として計算する「テンピン」や1000点を50円として計算する「テンゴ」で賭け麻雀を行っていた案件ついて,『本件麻雀店で行われていた賭麻雀においては,40分ないし1時間程度のゲームごとに,「テンピン」のレートでは,数千円を超える金銭がやり取りされ(「ウマ」のルールにより,少なくとも3000円はやり取りされることになる),「テンゴ」のレートにおいても,その半額程度の金銭がやり取りされていたことが認められる。A氏が参加した「テンピン」のレートでの賭麻雀においても,1回の半荘で,7300円の勝ちと約5400円の負けが生じている。』と認定したうえで,
『上記のとおり,決して低廉とはいえない金銭のやり取りがされる賭麻雀をさせていた』と判断して,低レートだから違法性が無く無罪だという弁護人の主張を認めませんでした。
この裁判例は賭博罪の裁判例ではないですし,店側も客からいろいろと金銭を徴収したりしていることもあるので,賭博罪でも直ちにこの裁判例を参考にすべきとまではいえないと思います。
しかし,最近話題の「テンピン」レートの賭けマージャン行為が,低レートだから懲戒処分としないというロジックについては,弁護士として疑問が残るところです。
コロナウイルスの影響により,予定されていた裁判期日は取り消されていき,現状,全国的に,急を要する裁判手続き以外は止まっている状況のようです。
東京や大阪などと異なり,名古屋では緊急事態宣言が出た時期が少し遅れたため,東京地裁などは止まっているが,名古屋地裁は裁判を続行しているという時期がありました。
しかしながら,その時期でも,裁判所に出頭することは無く,電話会議システムを利用して期日を行っていました。
法律的に説明すると,民事訴訟法175条に規定されている「書面による準備手続き」の制度を利用して,裁判所と双方代理人の3者による電話会議を行いました。
書面による準備手続きというものを今まで経験したことが無かったのですが,コロナウイルスの感染防止という状況が,民訴法175条のその他相当と認める場合に当たるとされたのだと思います。
和解手続きについても,様々な検討がなされているようです。
例えば,調停に付して17条決定をしてもらう方法が検討されているようです。
この場合だと,裁判所が判断を示すという手続きであるため,和解とは異なりますが,双方が合意している内容をもとに決定が出されるならば,和解と変わらないため,ほとんど問題は生じないと考えられます。
細かくは,異議申し立てができる余地があるなどの点で異なりますが,異議が出そうならば,裁判所も決定を出さないので,大きな問題にはならないと思います。
また,裁定和解という制度の利用も検討されているようです。
裁定和解は,当事者双方から,裁判所の定める和解条項に服する旨の共同申立てがあるときに,適当な和解条項を定めてもらって告知を受ける(民訴法265条)という制度です。
このように,現在,コロナウイルスの影響で,裁判所の手続きも通常とは異なっていますので,弁護士業務を行うにあたっては,各手続きについて注意して対応していかなければならないと思いました。
本日,再審の裁判で無罪判決が出ました。
そこで,刑事手続きにおける再審の制度について検討したいと思います。
再審とは,刑事訴訟法435条以下に規定されている制度であり,事実認定の誤りを是正するための制度であるとされています。
再審を請求するためには,再審を請求できる人(有罪の言い渡しを受けたものなど 刑訴法439条参照)が,原判決の謄本・証拠書類・証拠物を添えて,再審請求趣意書を管轄裁判所に提出するとされています(刑訴法規則283条)。
そして,再審請求があったときには,裁判所は請求に対して審判を行うこととなります。
再審請求に理由があると判断されたときには,裁判所は再審開始決定をすることとなります(刑訴法448条)。
再審開始の決定をしたときは,刑の執行を停止することもできます。
本日,無罪判決が出たケースの場合,再審開始の決定時には,既に刑期を終えていたため,刑の執行を停止するということは無かったようですが,袴田事件では,再審開始決定の際に,刑の執行を停止されています。(但し,袴田事件では,その後に,再審請求棄却決定があるなどしています。)
なお,再審請求が認められて,再審開始決定が出され,しかも無罪判決が出される事案は,多くは無いですが,日本弁護士連合会が支援している再審事件というものが複数あり,今回,無罪判決が出た事件についても,日本弁護士連合会が支援していた事件です。
この事件については,中日新聞で特集が組まれており,何故,冤罪が発生したのかという記事が出ていたので気になっていたのですが,無罪判決を言い渡されることになり,良い結果であったと思います。
最近,弁護士費用保険についてご説明することがありましたので,改めてこの保険について取り上げたいと思います。
弁護士費用保険という保険について,大きく分けると,①弁護士費用のみを対象とする保険(調べてみると4社ぐらいの少額短期保険株式会社が商品を発売しているようです。),②自動車保険に特約として附帯されている保険,③火災保険・医療保険などに特約として附帯されている保険があると思います。
(クレジットカードに附帯できることもあるようですが,私は見たことがありませんので,数が多くないのかもしれません。)
このように,弁護士費用を保険会社が代わりに払ってくれる保険は様々なものがありますが,各社によって支払い可能な金額は様々です。
弁護士費用の支払基準としては,日本弁護士連合会と協定している保険会社が採用しているLAC基準(ラック基準)という基準があります。
この基準に関しては,着手金・成功報酬金方式のほかに,少額の物損事故などにも対応できるようにするため時間制報酬(タイムチャージ)方式が設けられています。
例えば,少額の物損事故で,相手方ともめてしまい訴訟に踏み切らざるを得ない場合,時間制報酬(タイムチャージ)方式であれば,かかった時間に対して弁護士費用が支払われるため,弁護士側も安心して依頼者様のために十分な時間を費やして事件を遂行できるというメリットがあるので,この方式が設けられています。
他方,日本弁護士連合会と協定していない保険会社もあり,これらの保険会社は,LAC基準を採用していません。
そのため,少額の物損事故などの場合には,弁護士費用を支払うために,保険では足りず,自腹を切らなければならない場合も存在します。
なお,LAC基準を採用していない保険会社でも,LAC基準よりも弁護士報酬の支払基準が良い場合もあるため,LAC基準を採用していないことが悪い会社であると言っているわけではありませんので,ご注意ください。
このように,弁護士費用を補償しますというアナウンスされていても,各保険会社によって,支払い可能額は様々です。
そのため,ご自身の加入されている弁護士費用保険が,万が一の場合,どのような補償を受けられるのかについて,約款を確認するなどされた方が良いと思います。
弁護士費用保険についての詳細は,弁護士にお問い合わせください。
民法改正の施行日が今年の4月1日からであることを踏まえて,時効について検討してみたいと思います。
従来,交通事故による損害賠償請求権の時効は,不法行為に基づく請求であることから,損害及び加害者を知ったときから3年とされてきました。
時効の起算点をいつとするのかという点に争いはあると思いますが,最短では,事故日から3年で消滅時効となっていました。
ところが,今回行われた民法改正により,この消滅時効の期間について変更される点があります。
改正後の民法724条では,基本的には,不法行為の消滅時効は「損害及び加害者を知ったときから3年」とされています。
しかし,人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は,「5年間」とされることとなりました。
このことを交通事故の場面にあてはめてみると,車両の修理代金などの物損に関する損害賠償請求権については,従来どおり3年で消滅時効となりますが,治療費や入通院慰謝料などを含めた人損に関する損害賠償請求権については,消滅時効の期間が5年間となります。
ここで,改正民法の施行日前に交通事故にあった被害者の方が,人損に関する損害賠償請求を行う場合,消滅時効は3年が適用されるのか,5年が適用されるのかという疑問が出てきます。
この点についても,附則35条に規定されており,生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間については,施行日の時点で改正前の民法による不法行為の消滅時効が完成していない場合には,改正後の新しい民法が適用されるとされています。
具体的には,2017年5月1日に事故に遭われた場合,施行日である2020年4月1日時点では,改正前民法による不法行為の消滅時効が完成していないので,新しい民法が適用され,「損害及び加害者を知ったときから5年」となります。
法務省において,交通事故被害者の方などに向けた民法改正ポイントを解説していますので,こちらもご参照ください。
消滅時効については,大変重要なことですので,ご不明な点がある場合は,弁護士にご相談されることをお勧めします。
先日,中日新聞に自転車保険に関する記事が出ていたので,改めて自転車保険について取り上げたいと思います。
中日新聞の記事によると,名古屋市の市民アンケートの結果では,名古屋市の自転車損害賠償保険への加入率は,自転車利用者の81.7%が加入しているとされており,名古屋では自転車保険の加入が進んでいるのだなと思いました。
しかしながら,私が弁護士として交通事故の法律相談にのっていて,自転車による事故に関して自転車保険の理解が,まだ足りていないのではないかと感じています。
自転車保険という特別の保険商品に加入している人は,自転車保険について理解しているのだと思いますが,火災保険や自動車保険に特約としてついている「個人賠償責任保険」の理解が不十分なのではないかと感じています。
契約者本人が気づいていないだけで,火災保険や自動車保険に,数百円の上乗せで個人賠償責任保険に加入している場合も多いです。
私が法律相談にのっている中で,「自転車で事故を起こしてしまったが,どうしたらいいでしょうか?」というご質問に対し,火災保険に個人賠償責任保険が付いていないかを確認してもらい,それで解決した事例を何回も経験しています。
そのため,自転車保険という特別の保険商品の存在だけではなく,「個人賠償責任保険」についても理解が進むと,より自転車事故による補償が進むのではないかと感じました。
なお,個人賠償責任保険のなかにも,示談代行サービスがついている保険商品と代行サービスがついていない保険商品が存在しますので,個人賠償責任保険を契約する際にはその部分にも注意して加入されることをお勧めします。
また,個人賠償責任保険の上限金額(1億円とされていることが多いような気がします。)についても注意が必要だと思います。
支払う保険料との兼ね合いもあると思いますが,相手に極めて大きな怪我を負わせてしまった場合,1億円でも不足する場合もありますので,可能であれば,賠償金額が無制限の個人賠償責任保険に加入しておくことが良いのではないかと思います。
前回に引き続き,交通事故に関するADRについて記載したいと思います。
二つ目に,公益財団法人日弁連交通事故相談センター(以下「交通事故相談センター」とします。)という組織が存在します。
こちらの組織は,全国に157か所の相談所があり,その中の43か所で示談あっ旋・審査を開催しています。
この43か所は全国に存在しており,東海3県であれば,愛知県・岐阜県・三重県の各県に1か所ずつ設けられています。
扱う対象としては,自動車や二輪車による事故事案に限られるため,紛争処理センターと変わりないですが,加害者が任意保険に加入していない場合でも取り扱うなどとされており,紛争処理センターとは異なる部分もあります(但し,紛争処理センターも,相手方が同意をしている場合は手続きを行う場合があるとしています)。
また,交通事故相談センターのばあい,紛争処理センターでは取り扱っていない共済関係の示談あっ旋も可能です。
例えば,教職員共済生協の自動車共済については,紛争処理センターは対象外となっていますが,交通事故相談センターでは対象とされているため,教師の方と事故した際などには,交通事故相談センターの利用を視野に入れる必要があります。
なお,交通事故相談センターの場合は,審査の対象となるのが9社の共済に限られているため,東京海上日動火災保険などといった一般的な保険会社は審査の対象とはならないことに注意が必要です。
交通事故相談センターの利用のための費用も無料です。
どちらの制度を利用すべきかについては,個々の事案に応じて適切なものを利用すべきであると思いますし,事案に応じて弁護士にご相談いただければと思います。
交通事故において,話し合いで解決が難しくなってきた場合,ADR(裁判外紛争解決手続)を利用して解決する方法をとる場合があります。
このADRに関しては,弁護士業務において利用することも多いのですが,交通事故の場合,複数存在して紛らわしいため,整理して説明したいと思います。
まず一つ目は,公益財団法人交通事故紛争処理センター(以下「紛争処理センター」とします。)という組織が存在します。
こちらの組織は,東京や名古屋などを含めて全国合計11か所に存在しており,各拠点で,交通事故に関する法律相談・和解あっ旋・審査会による審査などが行われています。
全国どこでも申立てできるわけではなく,申立人の住所地や事故地によって利用できる支部・相談室が異なってきます。
例えば,愛知県にお住まいの方の場合は,名古屋支部に管轄があります。
申立てのための費用は無料です。
もっとも,東海地方にお住まいの方でも,三重県や岐阜県にお住いの場合は,名古屋支部のある名古屋市内まで赴かなければならないので,紛争処理センターの利用がしにくいという難点があります。
また,紛争処理センターで取り扱わない事件というものも存在しています。
例えば,加害者が自動車ではない事故(自転車VS歩行者など)については,対象外とされています。
さらに,加害者が契約している任意自動車共済が,JA共済連,こくみん共済 Coop(全労済),交協連,全自共及び日火連以外である場合には利用できないとされています。
そのため,教員の方が加入されていることがある,教職員共済生協の自動車共済などについては,基本的に利用できないことになります。
もう一つのADRについては,次回記載したいと思います。
今更ながらですが,弁護士業務の中で,ビデオリンク方式につき検討する機会があったので,記載しておきたいと思います。
ビデオリンク方式とは,刑事裁判において証人を尋問する際に,証人を法廷外の場所に呼び出し,映像と音声をモニターできる装置を使って法廷から尋問する方法のことをいうとされています。
このビデオリンク方式を採用される要件としては,刑事訴訟法第157条の6に規定されています。
同条第1項第1号・2号は分かりやすくて良いのですが,同条第1項第3号の要件をどのように考えるべきかが問題となります。
第3号は,第1号・第2号で補足できない事案で,ビデオリンク方式を採用するために規定されているのでしょうが,その範囲が拡大されていくと,何でもかんでもビデオリンク方式が可能であるとされかねないことが懸念事項です。
この点,立法担当者は,第3号の趣旨について,裁判官や訴訟関係人等が在廷する法廷という場所的要因により圧迫を受け,著しい屈辱感,恐怖心,畏怖心,羞恥心などを抱く,あるいは著しく困惑を感じるなどの強度の心理的負担を負う恐れがあると認められる者についてビデオリンク方式を行うとされていたようです。
一方,証人の遮蔽措置(刑事訴訟法157条の5)は,被告人や傍聴人から見られていることなどにより,いわば人的に圧迫を受けている場合に行われるとされていたようです。
この二つを比較すると,場所的要因による圧迫に対する対処はビデオリンク方式,人的要因による圧迫は遮蔽措置というように区分けされていたのではないかと考えられます。
ビデオリンク方式は合憲であることについては最高裁の判断が示されていますが,被告人の反対尋問権を制限する側面があることからも,弁護士としては,裁判所にビデオリンク方式の安易な採用は控えるよう訴えていく必要があるのではないかと思います。