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再審事件について

本日,再審の裁判で無罪判決が出ました。

そこで,刑事手続きにおける再審の制度について検討したいと思います。

 

再審とは,刑事訴訟法435条以下に規定されている制度であり,事実認定の誤りを是正するための制度であるとされています。

再審を請求するためには,再審を請求できる人(有罪の言い渡しを受けたものなど 刑訴法439条参照)が,原判決の謄本・証拠書類・証拠物を添えて,再審請求趣意書を管轄裁判所に提出するとされています(刑訴法規則283条)。

そして,再審請求があったときには,裁判所は請求に対して審判を行うこととなります。

再審請求に理由があると判断されたときには,裁判所は再審開始決定をすることとなります(刑訴法448条)。

再審開始の決定をしたときは,刑の執行を停止することもできます。

 

本日,無罪判決が出たケースの場合,再審開始の決定時には,既に刑期を終えていたため,刑の執行を停止するということは無かったようですが,袴田事件では,再審開始決定の際に,刑の執行を停止されています。(但し,袴田事件では,その後に,再審請求棄却決定があるなどしています。)

 

なお,再審請求が認められて,再審開始決定が出され,しかも無罪判決が出される事案は,多くは無いですが,日本弁護士連合会が支援している再審事件というものが複数あり,今回,無罪判決が出た事件についても,日本弁護士連合会が支援していた事件です。

この事件については,中日新聞で特集が組まれており,何故,冤罪が発生したのかという記事が出ていたので気になっていたのですが,無罪判決を言い渡されることになり,良い結果であったと思います。

 



弁護士費用保険について

最近,弁護士費用保険についてご説明することがありましたので,改めてこの保険について取り上げたいと思います。

弁護士費用保険という保険について,大きく分けると,①弁護士費用のみを対象とする保険(調べてみると4社ぐらいの少額短期保険株式会社が商品を発売しているようです。),②自動車保険に特約として附帯されている保険,③火災保険・医療保険などに特約として附帯されている保険があると思います。

(クレジットカードに附帯できることもあるようですが,私は見たことがありませんので,数が多くないのかもしれません。)

 

このように,弁護士費用を保険会社が代わりに払ってくれる保険は様々なものがありますが,各社によって支払い可能な金額は様々です。

弁護士費用の支払基準としては,日本弁護士連合会と協定している保険会社が採用しているLAC基準(ラック基準)という基準があります。

この基準に関しては,着手金・成功報酬金方式のほかに,少額の物損事故などにも対応できるようにするため時間制報酬(タイムチャージ)方式が設けられています。

例えば,少額の物損事故で,相手方ともめてしまい訴訟に踏み切らざるを得ない場合,時間制報酬(タイムチャージ)方式であれば,かかった時間に対して弁護士費用が支払われるため,弁護士側も安心して依頼者様のために十分な時間を費やして事件を遂行できるというメリットがあるので,この方式が設けられています。

 

他方,日本弁護士連合会と協定していない保険会社もあり,これらの保険会社は,LAC基準を採用していません。

そのため,少額の物損事故などの場合には,弁護士費用を支払うために,保険では足りず,自腹を切らなければならない場合も存在します。

なお,LAC基準を採用していない保険会社でも,LAC基準よりも弁護士報酬の支払基準が良い場合もあるため,LAC基準を採用していないことが悪い会社であると言っているわけではありませんので,ご注意ください。

 

このように,弁護士費用を補償しますというアナウンスされていても,各保険会社によって,支払い可能額は様々です。

そのため,ご自身の加入されている弁護士費用保険が,万が一の場合,どのような補償を受けられるのかについて,約款を確認するなどされた方が良いと思います。

弁護士費用保険についての詳細は,弁護士にお問い合わせください。

 



民法改正と消滅時効

民法改正の施行日が今年の4月1日からであることを踏まえて,時効について検討してみたいと思います。 

従来,交通事故による損害賠償請求権の時効は,不法行為に基づく請求であることから,損害及び加害者を知ったときから3年とされてきました。

時効の起算点をいつとするのかという点に争いはあると思いますが,最短では,事故日から3年で消滅時効となっていました。

ところが,今回行われた民法改正により,この消滅時効の期間について変更される点があります。

改正後の民法724条では,基本的には,不法行為の消滅時効は「損害及び加害者を知ったときから3年」とされています。

しかし,人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は,「5年間」とされることとなりました。

このことを交通事故の場面にあてはめてみると,車両の修理代金などの物損に関する損害賠償請求権については,従来どおり3年で消滅時効となりますが,治療費や入通院慰謝料などを含めた人損に関する損害賠償請求権については,消滅時効の期間が5年間となります。 

ここで,改正民法の施行日前に交通事故にあった被害者の方が,人損に関する損害賠償請求を行う場合,消滅時効は3年が適用されるのか,5年が適用されるのかという疑問が出てきます。

この点についても,附則35条に規定されており,生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間については,施行日の時点で改正前の民法による不法行為の消滅時効が完成していない場合には,改正後の新しい民法が適用されるとされています。

具体的には,2017年5月1日に事故に遭われた場合,施行日である2020年4月1日時点では,改正前民法による不法行為の消滅時効が完成していないので,新しい民法が適用され,「損害及び加害者を知ったときから5年」となります。

法務省において,交通事故被害者の方などに向けた民法改正ポイントを解説していますので,こちらもご参照ください。

消滅時効については,大変重要なことですので,ご不明な点がある場合は,弁護士にご相談されることをお勧めします。

 



自転車保険について

先日,中日新聞に自転車保険に関する記事が出ていたので,改めて自転車保険について取り上げたいと思います。

中日新聞の記事によると,名古屋市の市民アンケートの結果では,名古屋市の自転車損害賠償保険への加入率は,自転車利用者の81.7%が加入しているとされており,名古屋では自転車保険の加入が進んでいるのだなと思いました。

しかしながら,私が弁護士として交通事故の法律相談にのっていて,自転車による事故に関して自転車保険の理解が,まだ足りていないのではないかと感じています。

自転車保険という特別の保険商品に加入している人は,自転車保険について理解しているのだと思いますが,火災保険や自動車保険に特約としてついている「個人賠償責任保険」の理解が不十分なのではないかと感じています。

契約者本人が気づいていないだけで,火災保険や自動車保険に,数百円の上乗せで個人賠償責任保険に加入している場合も多いです。

私が法律相談にのっている中で,「自転車で事故を起こしてしまったが,どうしたらいいでしょうか?」というご質問に対し,火災保険に個人賠償責任保険が付いていないかを確認してもらい,それで解決した事例を何回も経験しています。

そのため,自転車保険という特別の保険商品の存在だけではなく,「個人賠償責任保険」についても理解が進むと,より自転車事故による補償が進むのではないかと感じました。

なお,個人賠償責任保険のなかにも,示談代行サービスがついている保険商品と代行サービスがついていない保険商品が存在しますので,個人賠償責任保険を契約する際にはその部分にも注意して加入されることをお勧めします。

また,個人賠償責任保険の上限金額(1億円とされていることが多いような気がします。)についても注意が必要だと思います。

支払う保険料との兼ね合いもあると思いますが,相手に極めて大きな怪我を負わせてしまった場合,1億円でも不足する場合もありますので,可能であれば,賠償金額が無制限の個人賠償責任保険に加入しておくことが良いのではないかと思います。

 



交通事故ADR2

前回に引き続き,交通事故に関するADRについて記載したいと思います。 

二つ目に,公益財団法人日弁連交通事故相談センター(以下「交通事故相談センター」とします。)という組織が存在します。

こちらの組織は,全国に157か所の相談所があり,その中の43か所で示談あっ旋・審査を開催しています。

この43か所は全国に存在しており,東海3県であれば,愛知県・岐阜県・三重県の各県に1か所ずつ設けられています。

扱う対象としては,自動車や二輪車による事故事案に限られるため,紛争処理センターと変わりないですが,加害者が任意保険に加入していない場合でも取り扱うなどとされており,紛争処理センターとは異なる部分もあります(但し,紛争処理センターも,相手方が同意をしている場合は手続きを行う場合があるとしています)。

また,交通事故相談センターのばあい,紛争処理センターでは取り扱っていない共済関係の示談あっ旋も可能です。

例えば,教職員共済生協の自動車共済については,紛争処理センターは対象外となっていますが,交通事故相談センターでは対象とされているため,教師の方と事故した際などには,交通事故相談センターの利用を視野に入れる必要があります。

なお,交通事故相談センターの場合は,審査の対象となるのが9社の共済に限られているため,東京海上日動火災保険などといった一般的な保険会社は審査の対象とはならないことに注意が必要です。

交通事故相談センターの利用のための費用も無料です。 

どちらの制度を利用すべきかについては,個々の事案に応じて適切なものを利用すべきであると思いますし,事案に応じて弁護士にご相談いただければと思います。



交通事故ADR1

交通事故において,話し合いで解決が難しくなってきた場合,ADR(裁判外紛争解決手続)を利用して解決する方法をとる場合があります。

このADRに関しては,弁護士業務において利用することも多いのですが,交通事故の場合,複数存在して紛らわしいため,整理して説明したいと思います。 

まず一つ目は,公益財団法人交通事故紛争処理センター(以下「紛争処理センター」とします。)という組織が存在します。

こちらの組織は,東京や名古屋などを含めて全国合計11か所に存在しており,各拠点で,交通事故に関する法律相談・和解あっ旋・審査会による審査などが行われています。

全国どこでも申立てできるわけではなく,申立人の住所地や事故地によって利用できる支部・相談室が異なってきます。

例えば,愛知県にお住まいの方の場合は,名古屋支部に管轄があります。

申立てのための費用は無料です。

もっとも,東海地方にお住まいの方でも,三重県や岐阜県にお住いの場合は,名古屋支部のある名古屋市内まで赴かなければならないので,紛争処理センターの利用がしにくいという難点があります。

 

また,紛争処理センターで取り扱わない事件というものも存在しています。

例えば,加害者が自動車ではない事故(自転車VS歩行者など)については,対象外とされています。

さらに,加害者が契約している任意自動車共済が,JA共済連,こくみん共済 Coop(全労済),交協連,全自共及び日火連以外である場合には利用できないとされています。

そのため,教員の方が加入されていることがある,教職員共済生協の自動車共済などについては,基本的に利用できないことになります。

もう一つのADRについては,次回記載したいと思います。 



ビデオリンク方式について

今更ながらですが,弁護士業務の中で,ビデオリンク方式につき検討する機会があったので,記載しておきたいと思います。

 

ビデオリンク方式とは,刑事裁判において証人を尋問する際に,証人を法廷外の場所に呼び出し,映像と音声をモニターできる装置を使って法廷から尋問する方法のことをいうとされています。

このビデオリンク方式を採用される要件としては,刑事訴訟法第157条の6に規定されています。

同条第1項第1号・2号は分かりやすくて良いのですが,同条第1項第3号の要件をどのように考えるべきかが問題となります。

第3号は,第1号・第2号で補足できない事案で,ビデオリンク方式を採用するために規定されているのでしょうが,その範囲が拡大されていくと,何でもかんでもビデオリンク方式が可能であるとされかねないことが懸念事項です。

 

この点,立法担当者は,第3号の趣旨について,裁判官や訴訟関係人等が在廷する法廷という場所的要因により圧迫を受け,著しい屈辱感,恐怖心,畏怖心,羞恥心などを抱く,あるいは著しく困惑を感じるなどの強度の心理的負担を負う恐れがあると認められる者についてビデオリンク方式を行うとされていたようです。

一方,証人の遮蔽措置(刑事訴訟法157条の5)は,被告人や傍聴人から見られていることなどにより,いわば人的に圧迫を受けている場合に行われるとされていたようです。

この二つを比較すると,場所的要因による圧迫に対する対処はビデオリンク方式,人的要因による圧迫は遮蔽措置というように区分けされていたのではないかと考えられます。

 

ビデオリンク方式は合憲であることについては最高裁の判断が示されていますが,被告人の反対尋問権を制限する側面があることからも,弁護士としては,裁判所にビデオリンク方式の安易な採用は控えるよう訴えていく必要があるのではないかと思います。



介護サービスについて

交通事故や労働災害により,重度の後遺障害が残ってしまい,障害福祉サービスを利用することを検討しなければならない方もおられます。

このような障害福祉サービスにはどのようなものが存在しているのでしょうか。

先月および先々月に本ブログに記載した装具・用具の支給ということが挙げられます。

 

その他,障害者の方にどのような福祉サービスが提供されるかという点については,障害者総合支援法という法律に規定されていますが,自立支援給付(介護給付・訓練等給付・自立支援医療・補装具など)と地域生活支援事業などがあります。

では,介護給付についてどのようなものがあるのでしょうか。

介護給付にもさまざまな内容が存在していますが,居宅介護や重度訪問介護や重度障害者等包括支援などのサービスが存在します。

居宅介護とは,身体介護・家事援助・通院等介助や通院等の乗降介助を行う訪問介護サービスのことを指します。

障害支援区分1以上の人で,支給決定を受けた人が利用できます。

原則1割負担で利用でき,市区町村などの窓口で申請して利用することになります。

重度訪問介護とは,常に介助を必要とする人が,食事・入浴などの身体介護,家事援助,外出介護や支援などのサービスを利用できるものです。

障害支援区分4以上の人で,支給決定を受けた人などが利用できます。

原則1割負担で利用でき,市区町村などの窓口で申請して利用することになります。

このほかにも,公的サービスについては,様々なものがあります。

ご不明な点等ございましたら,弁護士にお問い合わせいただければと思います。

 

なお,この度,当法人のホームページの集合写真を変更いたしました。

 

 



労災における装具・用具の入手方法2

前回に引き続き,福祉用具の入手方法について検討したいと思います。

前回は,電動車椅子について検討したので,次に例示した上肢の機能を補う補助装具について検討したいと思います。

これらの補助装具のなかには,労災保険での支給対象ではないものが存在します。

このような場合,労災保険の補装具の支給制度の利用はできないので,障害者総合支援法の補装具などの支給の制度の利用を検討することになります。

障害者総合支援法の制度の利用とは,簡単にいうと身体障害者手帳を取得して,制度利用するということです。

なお,ここで,注意が必要ですが,身体障害者手帳を取得するためには,市役所などの障害担当窓口に行かなければならず,先ほど述べた労働基準監督署とは異なる場所に行かなければならないという点は注意が必要です。

身体障害者手帳取得における障害固定時期の目安について,愛知県のホームページでは,外傷性脊髄損傷による完全麻痺の場合3か月後から申請できることになるとのことです。

もっとも,いつ頃,身体障害者手帳の申請を行えばよいかという点については,個々人の身体の状態や医師の見解などに左右されることから,主治医との相談が不可欠になると思います。

身体障害者手帳を取得すれば,補装具や日常生活用具などの給付が受けられますので,必要に応じて申請手続きを行うことになります。

さらに,一般社団法人労災サポートセンターという団体が,福祉用具購入支援事業というものを行っています。

もっとも,対象となる福祉用具が電動車いす等・床ずれ防止マット・介護用ベッドのうちの1つに限られることや,労災サポートセンターが指定する販売店での購入に限定されるなど,適用条件が限定されていますが,選択肢の一つとして検討してみるのはいかがでしょうか。

なお,一般社団法人労災サポートセンターに,福祉用具購入支援の申請方法が記載されているため確認されてみても良いかもしれません。

このように,福祉用具だけでも様々な制度が複雑に絡み合っているため,詳細は,各種窓口および弁護士にご相談されることをお勧めします。



労災における装具・用具の入手方法1

弁護士が労災事件を取り扱っている中で,今後の生活がどのようになっていくのかという質問を受けることがしばしばあります。

労働災害により,重傷を負い,四肢麻痺などの重度の障害が残った場合に,どのように今後の生活を進めていったらよいのかという点は,被害者の方が最も気になる点であるため,以下に記載したいと思います。

なお,65歳以上の方の場合は,介護保険を検討することになるため,別の手続きとなります。

 

まず,福祉用具の入手方法について述べてみたいと思います。

四肢麻痺などの方の場合,電動車いすやわずかばかり残った上肢の機能を補うための器具・装具などの様々な福祉用具が必要となってくることがあります。

このような様々な福祉用具を入手するためにどのような手続きをとればよいのでしょうか。

電動車いすを入手するためには,労災保険の補装具の支給の制度の利用を検討することになります。

症状固定前であっても,場合によっては労災保険での電動車いすの支給が認められる場合もあるため,労働基準監督署・労働局などでの相談が必要になると思います。

手続きの流れとしては,労働局へ「義肢等補装具購入・修理費用支給申請書」を提出します。

その後,労働局が調査の結果,労働局から申請者に「義肢等補装具購入・修理費用支給承認(不承認)決定通知書」が送られてきます。

その後,業者さんに補装具の購入の注文を行い,労働局から業者さんに直接お金を払ってもらうための手続きを取っていきます(一度,自分で代金を立て替えるという方法もあります)。

このように,手続きが複雑なため,詳細は労基署(労働局)あるいは弁護士までご相談ください。

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なお,その他の福祉用具については,次回検討したいと思います。



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